武をやっていなくとも、たとえ小柄で病弱な方でも、人間として強い方、大きな方がいる。

そのような方に出会うと、己の弱さを顧みて、思わず首を垂れてしまう。

反面、体格に恵まれ道場や試合では強くとも、実社会に出れば、人間として脆弱な方もいる。

つまり、いくら武技を鍛えて力を得ようとも、

この時代や社会、日常を生きていくことそのものと無縁であれば、

それは武人ではなく、競技者であり、試合コートより大きなもの(制度、組織、権威…)の前には非力な存在ではないか。

いろんなものが揺れ動き、崩壊していく当代だからこそ、

武の稽古を、現実からの「逃げ場」とするのではなく、

物事のとらえ方、向き合い方を磨き、己の人間存在を拡張していくことにつなげたい。

そして、この混迷のなかで、身の回りの人々や社会を、少しでも守れるチカラを感得したい。