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古剣稽古日誌

古剣稽古日誌

家伝剣術 そのほか

今週は日本武道館演武、文化庁出張、国立歴史民俗博物館共同研究と、一週間で3回も東京に行く予定が入ったが、いつもカバンのなかには緊急グッズを入れていた。

以前は、登山のときには、もしも遭難したときのために必ず充分な装備を持つが、人の住む世界に行くときには「お金さえあれば何とかできる世界に行くのだから」という甘えがあった。

しかし岩手で3.11を被災し、避難所をハシゴして歩いてきた経験以来、都心への出張はおろか、日々の通勤でさえ、市外に出るときには、必ずカバンのなかに、暖や明かりとなる道具、発電装置、小型ラジオ、救急薬類、軍手、マスク、テーピング、折り畳み式のツール、非常食、水…などを常に携帯するようになった。

もちろん自家用車にもだ。

いつなんどき、なにがあっても生き延びて帰ってきて、家族を守るためである。

心配性だと笑う人もいよう。だが3.11で、「絶対安心だ」「盤石だ」と考えていた毎日が、社会が、そうではなくなることをハッキリと痛感させられたからだ。

特に、福島原発がまだまだ安定していない(今日も不穏なニュースがあったらしいが…)。

そんなニュースを聞くたび、地震ならともかく、福島原発に再び「もしも」があれば、我々は全く無力だ。この社会のすべてが一瞬でおじゃんになる。そのとき私は家族を守れるのか…

という緊張感から、一生、解放されることがない時代に生きていることに気づかされる。

家伝剣術は、戦国期、危機と隣り合わせの毎日から生まれてきたという。

だから、その精神を受け継いで、この混沌を生きて乗り越えていくことも稽古のひとつなのだろう。

「大丈夫さ」と目をつむって考えないことも、考えすぎてノイローゼになるのもどちらも居着いている。いざというときには動けない。

有事にはいつでも抜ける「鞘の内」を秘めつつ、穏やかな日々をイキイキと暮していきたい。そのような心身を養うことにおいて家伝剣術稽古は効果があるはずだ。(なぜなら実際にそのために生まれ、使われていたのだから)

緊急のときに、ひとつ悟りがあるのだとすれば、よけいなことがそぎ落とされて、本当に必要なことは何か、ハッキリと体感されてくることなのではないか。

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