何度も言うが、現代日本において刀剣は、とっくの昔に武器としての実用性を失っている。

武術専門誌でさえ、刀剣のことを「古式ゆかしい武器」と表現するほどだ。

だが道具としての刀剣は、歴史のなかで多様な特性を帯びていたので、

時代も社会も全く変わっても、充分に様々なことへ、いまへつながることができる。

そこから導き出されることとは。

静止しているようでありながら動と一致、居着かず、間欠なく、流れ続ける精妙さが、

いかに不可思議な現象を生み、破られない存在と化するのか示してくれる。

それは我々が生きている現象、自然界そのものと似ており、

反対に、私のように過去に、いまに立ち止まり、何かに固着しようとすることがいかに愚かで弱く、

すなわち、死にも等しい振る舞いであることに気づかせてくれる。

そのような精妙な存在である刀と一体化して、慮外の己を発見していくこと。

それが剣ゆえの特性、稽古の妙味ではないか。