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古剣稽古日誌

古剣稽古日誌

そのほか 林崎新夢想流居合

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「全国古流武術フォーラム2015―林崎甚助の居合を探る―」が盛会のうちに終了した。

日本各地の各古流武術流派との技術交流、研鑽の場を創造することが一番の目的だ。

大会でご提示した弘前藩の林崎新夢想流居合は、決して「正解」ではなく、交流のためのきっかけ、研究素材にすぎなかった。

総勢約50名。東北各地や関東、関西、九州からも参加者があった。

多くの方々からご支援をいただいたことに深く感謝申し上げます。

ことに、日本武道文化研究所(川村景信氏主宰、通称「文武研」)御一同、修武堂のお仲間からは、多大なるご支援をいただいた。本当にありがとうございました。

9月19日フォーラム当日は、青森県武道館柔道場において、文武研による最新の居合道史研究発表があった。そして近世の武士達が記した各流武芸伝書実物の展示も行われた。

一般に、武道史研究と実技稽古は、それぞれ別の担い手に分かれてしまい、ほとんど交流がないものだ。

しかし文武研では、実証的な伝書史料研究と実技稽古が一体となっておられる。これは凄い。

特に林崎の居合の歴史研究については、現在、国内随一のレベルにあられる。

ご報告のなかで、日本各地に様々な形態となって伝承されている林崎系統の各居合の底を、共通して流れている術理があろうこと、

当時の武士達が必ずしも固定的な形稽古ばかりではなく、変化させて遣う稽古もしていたこと等も大変参考となった。

そして開祖林崎甚助以来、全く変化していない技法がなんであるのかは、まだ特定できないこと、

弘前の林崎新夢想流居合がどのような歴史的変化を受けて伝承されたのか、客観的に知ることができた。

我々は「伝統」を「不変だ」と思いたいものだが、そうではない。

各代の先人達の工夫、社会的な影響も受けて変容している事実を知ったとき、いままで見えなかった稽古が見えてくるものだ。

その後は実技稽古。

下田雄次氏らによる弘前藩林崎新夢想流居合演武の後は、私からの簡単な解説のみで、あとは参加者みなさんの自由な工夫、交流稽古におまかせし、我々もそれに加えていただいた。

なぜならば当会は「正解」を知らないので、オープンエンド、学級崩壊状態でもかまわない。

交流のなかから新しい気づきが、世界が生まれてくるとの期待がある。

今回は、なんらかの武種の経験者が多かったため、少しの提示があればどんどん展開され、私が出る幕ではなかったことも事実である。

夜は、岩木山岳温泉にある、当会会員だった故加川康之氏別荘で、本当に楽しい懇親会となった。

当会がいつも野外合宿稽古をやっていた懐かしい場所。御夫人の御好意でお借りできた。

川村氏が加川氏肖像を描いた奉納画を製作してくれた。

それに献杯した後、外崎源人氏による扇子斬り大会、下田雄次氏と外崎氏による岩木山お山参詣囃子演奏、来賓としてお招きした甲野善紀先生によるいつもの深夜稽古会等で大いに盛り上がった。

翌日20日は、津軽総鎮守岩木山神社にて、日本各地の十四流派による奉納演武を行った。

拝殿での玉串奉納の後、青空と国重要文化財の楼門を前にして、尺八、舞、抜刀、手裏剣、棒術、柔術、剣術、居合などの妙技が次々と演武されていく様は、誠に圧巻であった。

我が家も、家伝剣術と林崎新夢想流居合を奉納させていただいた。

明治22年(1889)に我が高祖父英一が同社へ奉納して以来126年ぶりのことであった。

来賓甲野善紀先生からは、

一般的に古流武術世界では他流との交流を忌むが、このように異流儀同士が対等な立場で自由な技術交流をする会は画期的であり、さらなる展開をしてほしい、

といった励ましのお言葉をいただいた。大変勇気づけられた。ありがたい。

ご参加いただいた各流、各位におかれては、今後も当会へのご指導ご鞭撻を賜りたい。

当会は設立以来10年間にわたって、異流儀との友好的な技術交流を基本姿勢としてきた。

どの御流儀にも開祖以来守るべき重要な教えとしきたりがあること、それに対して敬服するべきことは重々承知である。

私もそのような環境に生まれ、育ってきた。

ではなぜ、全く技量がない私が、このような大それたことをしているのか。

「伝統」は重要であるが、それに依存し、それを標榜するあまりに、閉じた環境のなかでやせ細っていくことへの危機感があった。

また、未知の技法への好奇心が止めらなかったからだ。幼い頃からだ。

よって「伝統」をベースにしながらも、様々な経験や失敗にもまれるなかから、自分なりに深く納得した技を習得したいという強い願いがあったのである。

修武堂は、私が模索し失敗するための場でもある。

しかしそれは決して私だけではないはずだ。

現在残されている古流武術も、おそらくその原初的形態は、異なる世界との接触や交流、模索のなかから発見され、熟成されていった存在であり、

その根本には、誕生時からのダイナミックな生命力と、歴史のなかサバイバルしてきた強靭なデータベースが内包されているはずだ。

そのエネルギーは、いまを生きる我々にとって大変魅力的な心身の文化遺産であり、目の前の危機を生きるための糧となるのではないか。

(この現代では、互いに門を閉ざして排撃しあうばかりの業界内の小闘争に夢中になっているうちに、より巨大なものの前には無力となってしまい、いつの間にか根こそぎふっとばされてしまう恐れはないか。

よって、それぞれの特性を交換するなかから、個々がそれぞれの得意をレベルアップし、

総体として簡単には流されない、多様で豊かな視座と強靭さをもつ社会へと質転換していかなくては。)

さて、今回のフォーラムのもともとの構想・企画は、当会の亡き加川康之氏が文武研川村氏らとともに「林崎居合サミット」(内輪では「ふぞろいの甚助たち」と笑っていたが…)として温めていたものであった。

改めて彼の慧眼さを思うとともに、生前に交わした約束がなんとか果たせたならばと安心し、その夜は久しぶりにぐっすりと眠ることができた。

しかしこれは始まりである。

一緒に準備や大会運営で東奔西走してくれた、修武堂や弘前大学古武術研究会、弘前大学居合道部所属の若い学生諸君も確実に成長されている。

私自身もそのなかで、なんともいえぬ新しいチカラをいただいた実感がある。

みなさんとの新しいご縁と、新しい希望とともに、新しい地平へと。

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