近年ふるさとの古武道、古武術に、様々な方々が関心を持ち、参加してくれるようになった。特に若い学生さん達が真剣に稽古されるようになった。
大変喜ばしい。我が家だけで稽古していた幼い頃からすれば、隔世の感がある。
様々なご縁をいただくなかから、私は新しい気づきと、たくさんの学びをいただいている。
一方で遺憾に思い、一生懸命な方々に申し訳なく思うことがある。ずっと黙ってきたことだ。
実は本県では「古武道など文化財指定ジャンル外だ」と断言される文化財識者がおられるくらい、一般への認識がまだまだ広がっていない現状があるのだ。
他地方では全く対応が異なる。古武道は決して「文化財ジャンル外」ではない。
私の拙い調査研究によれば、国内の各県市町村等自治体によって文化財無形文化財)指定された「古武道」は現在約35例存在する。沖縄などは、知事自ら、沖縄空手無形文化財保持者を増やし、空手専門の課を設けるなどして、その文化財保護と普及に力を入れている。(古武道・古武術文化財たりうるのかという問題について、全国の事例を参考にした拙稿を執筆中だ)
なにより、ふるさとにおいて「文化財指定外だ」とされることは、我が一族が数世代にわたり、生涯をかけて継承してきたものが否定されたことであり、父子ともども誠に残念で耐えがたき思いがある。
しかしよく考えるとこの問題は、私ひとり、我が家だけで我慢して終わる問題ではない。
すなわち「古武道が文化財ではない」とすれば、当流だけではなく、青森県すべての古武道・古武術各流儀の歴史と現在、その文化的価値が認められないということになる。
本当にそれでいいのだろうか。
現実に存在し、伝承されてきた中近世以来の文化であるのに「制度上のジャンル外だ」という理由だけで「認定できない」「認識できない」という。稽古仲間達も大変残念がっている。
全く非力な私ができることは、我が身一つでやれることしかない。
すなわち、多くの有志たちと共に、忘れられたこの世界を再生し、分かち合っていくこと、後から来る人々を支援していくことだ。
この世界をより深く、豊かなものにしていくことだ。
そのためにも、私自身が、この暗い部屋に明かりを灯し、この世界の実質を少しでも保証できる存在になるよう昇華しなくてはならない。
幼い頃からこの稽古は、この道は、世の中の誰とも共有できない小道かと思い込んできた。
しかし違う。この稽古は、この心身は、我ひとりだけのためではない。
例え小さくとも、ふるさとにおける、この世界全体の存亡、そして再生と未来への責任がある。