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古剣稽古日誌

古剣稽古日誌

住む場所には、何かしらご縁があるものか。

実家の横を小さな用水堰が流れている。

その幅は数メートル。飛び越えた川向いは、故笹森順造師範の生家だ。

また反対側には、同じ小野派一刀流故高杉健吉師範の子孫家がある。

また近くには、家伝剣術および林崎新夢想流居合師範の小田桐友平家もあった。

ともかく、実家のある仲町武家住宅保存地区は、幕末から近代の武芸師範達が住んでいた。

そのなかで私は生まれ、育ってきた。

その先人達が、一堂に会した古写真がある。

昭和初期か大正期か。旧藩時代の剣術師範達や、笹森師範、市川宇門などの近代剣道師範、当時の津軽の武道界の重鎮達約50名が勢ぞろい。

そのなかには我が祖父の若き頃の姿と、小田桐友平師範もいる。

撮影場所は、昭和初期の護国館道場だと記されている。

私は、なぜかその古写真が気になり、剣術から剣道への移行期の雰囲気、そして先師達の顔を知る唯一の資料として、20代の頃からときどき眺めてきた。

さて、今回ひょんなことから、実家から30分離れた町会へと引っ越してきたのだが、新居に来た父が妙なことをいう。

「ここは、かつて護国館があったところではないか…」

私は、初めて知る事実だった。

ほかにも無数に住居はあるのに、私は自分でも全く知らないまま、親戚の一戸家(画家 野沢如洋の生家)のお導きで、奇遇にも、青年時代からずっと気になっていた、あの先達たちの集合写真の場所に住むことになった。

ご縁なのだろう。先人達に呼んでいただいたのだろうか。

思えば、最初この住宅を見たときに、新築なのになぜか、古い匂いが幾層にも重なっている気配がして、数日前、私は愛刀ですべての部屋と押し入れを祓い清めていたのだった。

家全体が明るく爽やかになった感じがしていた。

拙き私をお導きください。

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