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家伝剣術は、一世紀近く、家人以外にお伝えすることがなかったため、私は「教え方」を知らない。
祖父や父からも、言葉少なく、五歳の頃から、ただカラダで習ったから、どう習ったのかよく覚えていない。
おそらく前近代の武術、技芸はみんなそうだろう。わかりやすくキチンとしたサービス体系が整っている技芸ほど、近現代の整理、変化があったのではないか。
だから他人にもどう伝えていいかわからない。
そのため、本日の定例稽古のように、初めて他人にお伝えする技ほど、なかなか身の内から言葉が出てこない。
だから自分でももどかしく、不安になる。本当にこの技でいいのかなと。
修武堂のお仲間はそんな姿ばかり目撃している。
今日は、家伝剣術二本目シリーズだ。
すなわち、家伝剣術は五本の基本技が、五つのステージで変化させながら学んでいくのだが、
そのなかの第二の基本技だけ取り上げて、それが五つの段階で変化していくことを体験。
そのなかで特に「変形(へんぎょう)」の技は、その名のとおり、今までやってきたことの応用のさらに先、異形の技に思える。
だがこれは、剣を構えて、振るだけで己自身が不安定になること、それをダメだと封じて、己が考えた安定性を求めると、矛盾のなかで自縄自縛になる。
そうではなく、不安定になることを逆に、己が変化するエネルギーとして利用することを学ぶのではないかとみている。もちろん、そのなかには学んだ他の要素も複合されているが。
ということについて、私本人が試行錯誤しているのから、稽古をご一緒される方々は大変だ。
道案内が迷っているのだから。
ところが、それを何度も模索しているうちに、己のなかが、体験が整理されてくる。
他の方が、意外な動きをした場合「なるほど、それもあるか」と気づかされ、それが私自身への問いかけとなり、幅を広げていく。
それを繰り返しながら、わたしの家伝剣術は練り上げられていく。
そうなれば、外部向けの講座でも披露できるようになる。
ところがそのころには、新鮮さが失われていることもあるかもしれない。