三尺三寸の長刀を操る林崎新夢想流居合は、とことん座って基本を覚えてから、やっと立って稽古する。いかにも、前近代の東アジア的な身体技法か。

そこから導かれる身体とは、いったいどのようなものであろうか。

かつての津軽では、多くの弘前藩士達と近代市民がこの古流居合を学んでいた。

まことに多様多彩な身体技法と豊かな精神文化である。

しかし、その百年前までの故郷のスタンダードを「古来から不変の伝統武道」を標榜する近代武道修行者が、いぶかしげにご覧になるのだから、もったいない。

ここ三日間、日中は吹雪に埋もれた庭の稽古場へ。夜は暖かい県武道館へ。

心身のなかに少しでも火を灯さねば、この極寒につぶされてしまう。だから稽古する。

外崎源人とS氏とともに、同流の組太刀である「五箇之太刀」「八箇之太刀」を稽古した。

三尺三寸の刀または木刀を帯びた者同士が、立って攻防する抜刀術稽古だ。

最初に何度も座って稽古したからこそ、見えてくるものがある。

つまり、これらの立ち技には、座り技で習得したことがそのまま反映されている。

父祖達が同流と併伝してきた卜傳流剣術も、この居合稽古のなかから見つめ直している。

またそのなかで、優れていると思っていた自由攻防稽古にも、利点と欠点があることも感じられてきた。

同流の立抜刀には、大小の刀を駆使する形もあり、見栄えのする所作もある。

しかし、それを現代的表演へと加工してしまうのか、そこから実を読み解いていくのかは、ひとえに稽古する我々にかかっている。

ささやかでも、ふるさとで熟成された、豊かな身体文化遺産を通じて、人々のなかに新しい希望の灯りを灯していきたい。

(お知らせ)

来月2月11日・12日に東京都内で、一般向けの林崎新夢想流居合(弘前藩伝承)稽古会を開催します。ご関心のある方はどなたでも歓迎いたします。

詳細は、Facebook弘前藩伝・林崎新夢想流居合